ブレイクとは何が越えたことなのか
ブレイク(ブレイクアウト)とは、価格が抵抗の上へ、または支持の下へ抜けることをいいます。ところが「越えた」には2つの意味が混ざっています。足が進んでいる間に高値(ヒゲ)だけが抵抗の上に出て、抵抗の下で確定した場合と、終値そのものが抵抗の上で確定した場合です。前者は、足が終わるとチャートに上ヒゲ1本として残るだけです。一般にダマシ(フェイクアウト)と呼ばれるのは、このように越えたように見えてレンジの中へ戻る動きで、終値で越えた後に数本のうちに再び戻ってくる場合も同じ名前で呼びます。この区別が大切なのは、ヒゲと終値が持つ情報が違うからです。ヒゲは、その価格まで買おうとする人が一時的にはいたものの、その価格を守るほどではなかったという記録で、終値は足が終わったときに市場が受け入れた価格です。そのためブレイクを語るときは、何が越えたのかと、どの時間足で越えたのかを一緒に言わないと、同じ場面について互いに違う話をすることになります。抵抗が1つの価格ではなく、何度も折り返した位置がつくる帯であれば、帯の上端まで越えてはじめてブレイクとみる人が多くいます。帯の真ん中で確定した足は、まだ抵抗の中にあると読まれます。
例: ダマシ。高値(ヒゲ)は抵抗の上に出ましたが、終値は抵抗の下で確定し、その後価格は下へ押し戻されました。
ダマシが生まれる仕組み
よく目立つ価格のすぐ向こう側には、注文が集まりやすくなります。抵抗の上には、下落側に賭けた人の損切り注文と、越えたら買うというブレイク狙いの買い注文が一緒に置かれていると説明されます。価格が抵抗を少し越えるとこれらの注文が一斉に約定して上に跳ねますが、その後に続いて買う人が足りなければ、価格は再び中へ押し戻されます。先物市場では、反対方向のポジションの強制清算が同じ役割を果たすこともあります。損切りや清算から出る注文は、新しい買いの意思というより既存のポジションの手じまいなので、その量が尽きると価格を押し上げ続ける力が残りません。この仕組みで確かめておきたい手がかりは、ブレイクの瞬間に出来高が一瞬増えてすぐ減るか、ブレイクした足が長い上ヒゲを残すか、次の足が高値を更新できないかです。逆に、越えた後も取引が途切れず、抵抗の上で足が確定し続けるなら、手じまいではなく新しい買いが入ってきていると解釈する人が多くいます。この説明どおりなら、ダマシは偶然の事故というより、多くの人が同じ線を見ているからこそ起きる現象です。
失敗したブレイクを逆に読む見方
ダマシの後に価格がレンジの反対側の端まで素早く動くことがあるため、失敗したブレイクそのものを逆方向の手がかりとして読む人もいます。ブレイクに乗った人たちが損切りするときに出す注文が、今度は逆方向へ価格を押す力になるという説明です。この見方をする人がよく見る基準は、レンジの中に戻った足の終値が抵抗の下のどこまで下がったか、そして次の足がその足の安値を割るかです。しかし、この解釈も同じ問題を抱えています。上ヒゲを残してレンジの中へ戻った足の次に、すぐ再びブレイクが成功することもあるので、失敗と判断する時点と基準を決めなければならず、その基準にもやはり遅れるという代償がついてきます。よくある思い違いは、上ヒゲ1本だけで逆方向を決めつけることです。ヒゲの長い足はトレンドの真ん中でもよく出ますし、レンジの端ではない場所で出たヒゲは、こうした解釈とはあまり関係がありません。結局、失敗したブレイクを読むこともブレイクを読むことと同じ種類の判断で、どちらにしても間違っていたときに手を引く位置を一緒に決めておく必要があります。
ブレイクを確かめる方法
ダマシをふるい落とすために使われる方法は、たいてい下の4つのどれか、またはその組み合わせです。どれも「もう少し様子を見てからブレイクと認める」という点では同じで、違いは何をどれだけ待つかです。出来高の条件の基準は、出来高急増スキャナーのように、直前20本の確定足の平均に対する倍率で測れます。時間足も結果を変えます。1時間足では終値でのブレイクだった動きが、日足では上ヒゲとして残るだけのこともあるので、どの時間足の終値を基準にするかも前もって決めておく必要があります。本数の条件は、時間足と掛け合わせて考えるほうがよいでしょう。15分足3本と日足3本は同じ「3本」でも、待つ時間がまったく違います。実際には1つだけを使うより、終値の確定を基本にして出来高の倍率を補助の条件に加えるといった形で、組み合わせて使うことが多くあります。条件を組み合わせるほどふるい落とされる場面は増えますが、次の節で見るように、遅れる度合いも一緒に大きくなります。
例: 終値で抵抗を上抜けた足(出来高は直前20本平均の約2.9倍)→ 戻ってきて抵抗だった価格の上で止まる → 再び上昇。終値の確定・出来高・リテスト後の維持がすべて見られる例ですが、リテストなしにそのまま離れていくブレイクもあります。
- 終値の確定:足が抵抗の上で終わってはじめて認める
- リテスト後の維持:再び下がってきて、抵抗だった価格の上で止まってはじめて認める
- 出来高を伴う:ブレイクした足の出来高がふだんより多くてはじめて認める
- 本数の維持:決めた本数の足が続けて抵抗の上で確定してはじめて認める
確認ごとに払う代償
確認の方法は、それぞれダマシを減らす分だけ何かを手放します。終値の確定を待てば、足が終わるころには価格がすでに遠くへ行っていることがあります。リテストを待てば、リテストなしにまっすぐ上がる強いブレイクを丸ごと逃します。出来高の条件は取引の少ない時間帯のブレイクをふるい落としますが、基準の倍率をいくつにするかで結果が大きく変わります。本数を増やすほどダマシはさらにふるい落とされますが、認める時点の価格は抵抗からさらに離れ、損切りの基準を抵抗の下に置くなら、損切りまでの距離も遠くなります。この代償は距離で考えるとよりはっきりします。確認を待つあいだに価格が抵抗から離れた分が逃した距離で、同じ距離だけ、間違っていたときに失う幅が大きくなります。そのため確認の条件を厳しくするときは、同じ損失の上限に収まるようにポジションの大きさを小さくして合わせる人が多く、この計算はポジションサイズの記事で扱います。よくある思い違いは、確認の条件を増やせば損がそのまま減ると考えることです。減るのは外れる回数で、1回外れたときの幅はむしろ大きくなることがあります。
代償のない確認はない
確認の条件を厳しくするほど、ダマシにかかる回数は減ります。しかし同じ条件が本物のブレイクの前半も切り落とすので、ふるい落とした損失と逃した利益のどちらが大きいかは、条件と市場によって変わります。ゆるいルールはよく外れるものの当たるときは早く乗れ、厳しいルールは外れにくいものの乗るのが遅れます。どちらが優れているとあらかじめ言うことはできず、実際のデータで測ってみるまでは、どちらも推測にとどまります。ルールを選ぶときによくある失敗は、過去のチャートで大きくやられたダマシのいくつかの場面を思い出し、それを避ける条件を付け足すことです。こうしてつくった条件はその場面にはよく合いますが、別の期間では本物のブレイクをより多く逃すことがあります。記憶に残るのは大きくやられた場面で、静かに成功したブレイクではないからです。条件を1つ変えるたびに、ダマシを何回避けたかと、本物に何回遅れて乗ったかを同じ期間で一緒に数えることが、公平な比べ方です。
ブレイクのルールを自分で測る方法
暗号資産バックテスターには、ドンチャン・ブレイクアウトのルールが入っています。初期設定は、終値が直前20本の最高値を上回ったら買い、終値が直前10本の最安値を下回ったら売るルールです。シグナルは確定した足の終値で判定し、約定は次の足の始値で行い、手数料(初期値0.1%)とスリッページ(初期値0.05%)を差し引いて、同じ期間ただ持ち続けた場合と並べて比べます。このルールではダマシが、買ってまもなく損失で終わる取引として残りやすいので、銘柄・時間足・期間を変えながら取引履歴と勝率、最大ドローダウンを見れば、そうした取引がどれくらいの頻度で、どれくらいの大きさで出たかを確かめられます。比べるときは、一度に1つだけ変えるのがよいでしょう。エントリーの期間だけを変えてみれば、基準が長くなるにつれて取引の回数と短く終わる損失の取引がどう変わるか、その代わりに利益の出た取引の入りがどれだけ遅れるかを、同じ画面で見られます。株式バックテスターにも同じルールがあるので、銘柄を変えて同じ比較を試せます。結果の読み方はバックテストの記事で扱います。
この記事が語らないこと
ブレイクが本物だったかダマシだったかは、結局、後になってからつく名前です。ここで紹介した確認の方法は、ダマシを減らす代わりに遅れることを受け入れる交換にすぎず、前もって両者を見分ける方法ではありません。同じ動きが、日足ではダマシに、1時間足では成功したブレイクに見えることもあります。また、この記事の説明は上下の端がはっきりしたレンジからのブレイクを前提にしています。レンジがはっきりしない場所に引いた線は、もともと多くの人が見ている線ではないので、先に見た注文が集まる仕組みがそのまま当てはまらないことがあります。出来高・リテスト・本数の基準も、相場が静かな時期と荒い時期とでは、同じ値でも違うように働きます。どの確認条件を使うかは、どれだけ遅れても構わないか、間違っていたときにどこで手を引くかと一緒に決めるべき問題で、この記事がその選択を代わりに行うことはありません。
暗号資産と株で違って見える点
暗号資産は24時間取引されるのでブレイクはいつでも起こり、取引の少ない深夜や週末には、少ない注文だけでも価格が抵抗を一時的に越えることがあります。こうした時間帯のブレイクが出来高の条件でふるい落とされやすい理由です。また暗号資産の取引は多くの取引所と先物市場に分かれているので、1つの取引所のチャートの出来高は全体の一部にすぎないことも考えに入れる必要があります。先物の強制清算が連鎖すると、抵抗の上にとりわけ長いヒゲができることもあります。株は通常の取引時間が終わった後のニュースが翌日の始値に反映されるので、抵抗の上に窓を開けて始まった後、取引時間中に窓を埋めてレンジの中に戻る形のダマシがよく挙げられます。この場合、日足には始値が抵抗の上、終値が抵抗の下の陰線が残ります。韓国株には1日の値幅制限があって1日に動ける幅が決まっており、サムスン電子やSKハイニックスのような大型株は、寄り付きと引けの板寄せに取引が集まるので、始値と終値の重みが大きくなります。米国の株価指数や大型ハイテク株は決算発表が取引終了後に出ることが多く、発表翌日の窓がブレイクの判断を大きく左右します。
実践のチェック手順
リアルタイムのチャートでブレイクを見るときにいちばんよくある落とし穴は、進行中の足です。足が終わるまで画面の終値はいまの価格にすぎないので、抵抗の上にあった足が確定直前に押し戻されると、「終値でのブレイク」が上ヒゲだけを残したダマシに変わります。出来高も足が進むあいだずっと積み上がっていくので、足の序盤に直前の平均と比べると実際より小さく見え、更新されるにつれて大きくなります。そのため以下の手順はすべて確定した足を基準にしています。
- どの時間足の終値で判断するかを先に決める
- 抵抗が1つの価格か帯かを示し、越えたとみなす基準を決める
- ブレイクした足が確定した後、終値がその基準の上にあるかを確かめる
- ブレイクした足の出来高を直前20本の確定足の平均と比べる
- 戻りが来たら抵抗だった価格の上で確定するか、間違っていたときに手を引く位置はどこかを確かめる
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